jigahouboku<自我放牧>

618

2011-11-30「林芙美子 風琴と魚の町」

from ALBUM : 「2011-1120111130 林芙美子_風琴と魚の町
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CuttingGuitar, Organ

Lyrics

No.618「林芙美子 風琴と魚の町」

青空文庫URL : http://bit.ly/t8jlPC

父は風琴を鳴らすことが上手であった。
音楽に対する私の記憶は、この父の風琴から始まる。
私達は長い間、汽車に揺られて退屈していた、母は、私がバナナを食んでいる傍で経文を誦しながら、泪していた。「あなたに身を託したばかりに、私はこの様に苦労しなければならない」と、あるいはそう話しかけていたのかも知れない。父は、白い風呂敷包みの中の風琴を、時々尻で押しながら、粉ばかりになった刻み煙草を吸っていた。
私達は、この様な一家を挙げての遠い旅は一再ならずあった。
父は目蓋をとじて母へ何か優し気に語っていた。

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