jigahouboku<自我放牧>

703

2012-02-23「若杉鳥子 棄てる金」

from ALBUM : 「2012-0220120223 若杉鳥子_棄てる金
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CleanGuitar x2, Aco.Guitar, BrushDrum, Chorus

Lyrics

No.703「若杉鳥子 棄てる金」

青空文庫URL : http://bit.ly/xOWUQq

 その日は暮の二十五日だった。
 彼女は省線を牛込で降りると、早稲田行きの電車に乗り換えた。車内は師走だというのにすいていた。僅かな乗客が牛の膀胱みたいに空虚な血の気のない顔を並べていた。
 彼女も吊皮にぶら垂ったまま、茫然(ぼうぜん)と江戸川の濁った水を見ていたが、時々懐中の金が気になった。
 彼女はこれから目的の真宗の寺へ、その金を持ってゆかなければならなかった。
 その金というのは、この春死んだ彼女の祖母が、貧しい晩年にやっと残しえた唯一の財産だったが、祖母の死後、親戚は大勢集まってその金の処分に就いて評議しあった。

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