LyricsNo.472「豊島与志雄 幻覚記」青空文庫URL : http://bit.ly/q98LSS筑後川右岸の、平坦な沃野である。消く水を湛えた川べりに、高い堤防があって、真直に続いている。堤防の両側には、葦や篠笹が茂っていて、堤防上の道路にまで蔽いかぶさり、昼間も薄暗く、夜は不気味である。 その堤防の上を、まだ夜明け前の頃、私は母と二人で歩いていた。私は七八歳だったが、別に恐さも不気味さも感ぜず、自分の村から半里余りも来たろうというのに、足も弱っていなかった。母と二人で、急いで歩いていった。 Bookmark |
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