Featured InstrumentsOtomata (iPad)LyricsNo.484「原民喜 夏の花」青空文庫URL : http://bit.ly/rf13EI私は街に出て花を買ふと、妻の墓を訪れようと思つた。ポケットには仏壇からとり出した線香が一束あつた。八月十五日は妻にとつて初盆にあたるのだが、それまでこのふるさとの街が無事かどうかは疑はしかつた。恰度、休電日ではあつたが、朝から花をもつて街を歩いてゐる男は、私のほかに見あたらなかつた。その花は何といふ名称なのか知らないが、黄色の小瓣の可憐な野趣を帯び、いかにも夏の花らしかつた。 Bookmark |
« 20110718 太宰治_待つ | 20110720 寺田寅彦_災難雑考 » |