jigahouboku<自我放牧>

546

2011-09-19「中原中也 山羊の歌:逝く夏の歌」

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No.546「中原中也 山羊の歌:逝く夏の歌」

青空文庫URL : http://bit.ly/b9HoJq

並木の梢が深く息を吸つて、
空は高く高く、それを見てゐた。
日の照る砂地に落ちてゐた硝子を、
歩み来た旅人は周章てて見付けた。

山の端は、澄んで澄んで、
金魚や娘の口の中を清くする。
飛んでくるあの飛行機には、
昨日私が昆虫の涙を塗つておいた。

風はリボンを空に送り、
私は嘗て陥落した海のことを 
その浪のことを語らうと思ふ。

騎兵聯隊や上肢の運動や、
下級官吏の赤靴のことや、
山沿ひの道を乗手もなく行く
自転車のことを語らうと思ふ。

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