Featured InstrumentsBass, DrumsLyricsNo.570「牧野信一 沼辺より」青空文庫URL : http://bit.ly/nQxHvNこんな沼には名前などは無いのかと思つてゐたところが、このごろになつてこれが鬼涙沼といふのだといふことを知つた。明るい櫟林にとり囲まれた擂鉢形の底に円く蒼い水を湛へてゐる。やはり噴火口の痕跡なのであらう。 土筆、ぜんまひ、ツバナ、蕨などの芽がわずかに伸びかかつた沼のほとりの草の上は羽根蒲団のやうで、僕はいつも採集道具を携へて来るのだが、ついぐつすりと寝込んでしまふのだ。例の浮遊生物の実験を続けようとしてゐるのだが、念願とするアミーバが容易に発見し難いので索然としてしまつたのだ。 Bookmark |
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