jigahouboku<自我放牧>

587

2011-10-30「牧野信一 パンアテナイア祭の夢」

from ALBUM : 「2011-1020111030 牧野信一_パンアテナイア祭の夢
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Guitar, Piano

Lyrics

No.587「牧野信一 パンアテナイア祭の夢」

青空文庫URL : http://bit.ly/tWXJHl

野菜を積んだ馬車を駆つて、朝毎に遠い町の市場へ通ふのが若者の仕事だつた。
村を出はづれると、白い川の堤に沿つて隣りの村に入り、手おし車ならばそのまゝ堤づたひに真ツすぐに、また次の村に入れるのだが、そのあたりから道が急に狭くなつてゐるので、馬車だと迂回して、鎮守の森の裏手から、村宿を通り抜け、鍛冶屋と水車小屋に、朝の挨拶をかけて、橋を渡るのであつた。
「お前の槌の音が聞えると、タイキ(馬)は、きつと脚を速くするぜ。」
「その脚音は此方にもちやんと聞えるわよ。斯んな勤勉家のお前と私とが、万一夫婦になつたら村一番の金持になるだらうね。」
鍛冶屋の娘と若者は斯んな話を、大声でとり交したことがあつた。
娘のあんな戯談を若者は...

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