Featured InstrumentsRhodesLyricsNo.597「豊島与志雄 白木蓮」青空文庫URL : http://bit.ly/tpVZFY桃代の肉体は、布団の中に融けこんでいるようだった。厚ぼったい敷布を二枚、上に夜着と羽根布団、それらの柔かな綿の中に、すっぽりとはいっているので、どこに胴体があるのか四肢があるのか、見当がつかない。実は、体躯はそこにあるに違いないが、それも既に、死の冷却と硬直と分解に委ねられているだろう。それは彼女の肉体ではない。――肉体の喪失を、私はそこに感じた。 Bookmark |
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