jigahouboku<自我放牧>

704

2012-02-24「坂口安吾 蒼茫夢」

from ALBUM : 「2012-0220120224 坂口安吾_蒼茫夢
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Lyrics

No.704「坂口安吾 蒼茫夢」

青空文庫URL : http://bit.ly/dXd4HE

 冬の明方のことだつた。夜はまだ明けない。然し夜明けが近づかうとしてゐるのだ。夜の不気味な妖しさが衰へて、巨大な虚しい悲しさが闇の全てに漲りはじめてゐる。草吉はそのとき自然に目を覚した。
 室内も窓の彼方も一色の深い暗闇ではあつたが、重量の加はりはじめた寒気と、胸苦しい悲しみの気配によつて、もはや夜明けに近いことを推定することができた。四時半前後であらうと思つた。
 草吉の日毎の目覚めは衰亡の中へ滑りこむやうに展らかれてくるので、殆んど愉しいものではなかつた。

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